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番外 アメリカでのクリスマス 7(伊織視点)

会場に帰ってきても透はいない。
どうしよう、どうしよう?






番外 アメリカでのクリスマス 7(伊織視点)






さっき気付いたことがある。
透が一人で迷っている分には全然問題ない。
探し出せばいいことだもん。
でも、もし私たちの”家”が目当ての誰かに目をつけられたのだとしたら大変なことになる。


言っちゃなんだけど、私たちの家は結構なお金持ちだ。
しかもただのお金持ちじゃない、所謂上流階級?とかいうやつだ。
秋原家は代々貿易商を務めていて、今ではその筋の最高峰とまで言われている。
貿易社会の頂点と言っても過言ではない。
そして、笹本家は晃さんが設立したまだ若い会社だ。
だけど、秋原家とのつながりがある。
秋原家は本当に気に入った相手としかつながりを持たない。
その秋原家が、笹本家が会社を設立する際に投資をした、という事で当時はすごく話題になったそうだ。
つながりを持つどころか投資をしたんだもんね。(そりゃ話題にもなるよ)

だからそこの一人娘である私と透は、曰く狙われる位置にいることは明白だった。
今まではこういったパーティに出たことはなかったし、私達も私達で自分たちがお金持ちだとわざわざ吹聴するような馬鹿でもなかったから、攫われたりという事は今までなかった。
きっと父もそれを予想して今までパーティとかに私たちを連れて行かなかったんだろう。
陰ながら守っていてくれたのかもしれない。

だから、今日は心配だった。

一人にすべきじゃなかった。

何で目を離したんだ自分!(せめて一言言ってけよ透!)





もう一度、会場の入口まで行ったら。

……………………いた!


「透!!!」
「伊織!!!」


私は透に向って駆け寄った。
透も私を見つけてこちらに駆けて来る。
私に向って腕を広げて今にも抱きしめようとしてきた、それを何とか避けで、そして。


スッパーン!!!!!


思いっっっきり叩いた。


「ふぬぁっ!!!」
「このバカ!!!」


思いっきり叩いたから、透は叩かれた場所に手を当てて頭を抱えるようにうつむいた。
でも私は、そんなんじゃ全然気持ちが落ち着かない。
ふーっふーっと息を整えようとしながら、それでも言わずにはいられない。
それなのにこいつ!


「い、痛い…まさかの予想外…」


ごめんなさいが言えんのか!!(弦一郎はどんな教育をしたんだ!)


「予想外…じゃねぇよ!!!!お前は学習能力がないのか!!迷子になるな!!」
「だ、だって…!!気になったんだもん…」


まだ口答えをするか!
というかやっぱり私の推理どうりだったか。(このバカめ)


「口答えするんじゃない!!」
「っ!はいっ!!」
「バカかお前は!バカなのかお前は!!!ごめんなさいは!!??」
「ごめんなさいっ!!!」
「んもおおお!!!心配したんだぞ!!!」
「伊織ー……っ!!」


全く、バカが。
私は言いたいことを言いきって、少しすっきりして苦笑した。
こいつは全く。
これだから目が離せない。(可愛い奴め)

透は私の言い分に何も言い返せないことが分かっているのか、下を向いて自己嫌悪中みたいだ。
こいつを見てると、親になった気分になるな。(嫌だ、同い年の娘とか)

私は嫌な想像をしてしまい思考が飛んでいると、ふと凄く近くから声が聞こえた。


「…おい」


何か、当惑してる感じ?
困ってる声?が本当にすぐ近く、それも私たちの頭上から聞こえてきた。
何かそれが気に入らなくて、まださっきの勢いも落ち着いてはいなかったから。
私は少し喧嘩腰に声を発してしまった。


「なに!?今取り込み中…………」


パッチリお目目の、印象強い青い瞳。
亜麻色(栗色?)の柔らかそうな、綺麗な髪の毛。
整ったそれでも幼さが残る顔に、くっきりと浮かんだ……………泣きボクロ。




「………………………ホクロ」



…………………っは!
あ、やべ。
べ様に向ってホクロって言っちゃった。

…まぁいいよね?
べ様だし。


「おい透…、誰だこの失礼な女は」
「は?失礼って。ホクロはホクロじゃ「親友の秋原伊織っていうの!!」


私の言葉を遮って、なんだか必死に透はべ様に向って私を紹介した。
べつに自己紹介くらい、私出来るよ?

そういう問題じゃねーよ!って言われたような気がした。



っていうか、なんでここに跡部がいるの!?
いや、私だってわかんないけど、いたんだよ!私だってビックリだよ!
もしかして跡部に連れて来て貰ったとか言う?
そうそう。絡まれてる所を助けて貰ってね…ってそれよりお前は自重しろよ!!
は?何を?
「ホクロ」だよ!
いや、自重できねぇよ。「べー」だよ「べ様」だよ?仕様がなくね?
お前の「仕様がない」の基準がわかんねぇよ!
本当、「ホクロ」とかウケるよね!!爆笑!
お前が言ったんだよ!!

素早くアイコンタクトで会話をするが、顔には出さない、さすが私!
透も何とか顔に出さないようにしてるみたいだけど、怒りがちょっと表に出てる。
これはあれか?私に対しての怒りなのか?

というか、絡まれていた発言について、後でじっくりねっとり話をしてもらおう。(ねっとり嫌!とか言わないそこ!)

私たちがアイコンタクトを交わしている間、跡部は何やら考え事をしていたようだがようやく言葉を発した。
若干不機嫌で、なおかつ皮肉っぽく。


「あーん?もしかして秋原貿易の娘か?あの親バカの」


お前!それは言っちゃダメな部分なんだぞ!!
て言うよりも、外の人にも分かるくらい家って親バカなのか……。(凹む)


「それを言うなホクロ!確かに親バカだけどさー(他人に言われるとダメージ倍)」
「ホクロじゃねぇ…。跡部、景吾だ!」
「(無視)…で、ホクロがここまで連れて来てくれたんだっけ?」


私は跡部の言葉を無視して(親バカの仕返しだ!)透に向きなおった。
透は私の発言と跡部の動向に若干の戸惑いを見せるも、なんとか言葉を返した。


「あ、うん」
「おお…そうか。悪かった。ありがとうホクロ」
「…てめぇ」


いやー、これ楽しいね!
跡部をおちょくるの楽しいね!!
ちなみに私は根に持つタイプだからな!覚悟しとけ!!(親バカ発言について)



まぁ、そのあとは予想できた通り、晃さんがすごかったとしか言いようがないだろう。
あれは、マジ引くわ。
若干どころかマジどん引きするわ。
絡まれてたのバレなくて良かったね、透!

そんな不穏なことを思っていると、奥から父も出てきた。


「おや、景吾くんじゃないか」
「…!お久しぶりです秋原さん」


父は跡部を知ってるのか…ってそうだよね。
跡部財閥だもんね、知ってて当然ってか。


父は晃さんに「おい、晃。そろそろ泣き止めよ」と声をかけて、晃さんを我に変えさせるという、透にとっては救いの手を入れてなんとかその場を取り成そうとしている。(ナイスだ!父よ!!)


「ああ・・・(グスッ)跡部財閥のご子息か・・・。いや、失敬。こんな姿を見せてしまって」
「いえ」


ああ、透が恥ずかしがってるのが手に取るように分かるよ。
気持ちわかるよ!わかりたくなかったけど。


「そうだ。あのねお父さん、私迷ってるところを景吾・・・くんに助けてもらったの」
「本当に?そうか・・・だから一緒にいたんだね。・・・景吾くん、うちの娘を助けてくれて本当にありがとう」
「私からも・・・。改めて・・・ありがとう、景吾」


笹本家の人たちに口々にありがとうとの言葉をもらって、跡部も笑った。
なんだ、子供っぽいこともできるんじゃん。
私がそう思うくらいには、跡部のその笑った顔が年相応に見えて、なんだか微笑ましかった。


私は跡部に近づいて、そっと「透を助けてくれてありがとうね………跡部」と呟いた。
その声が聞こえたみたいで、跡部も笑って「ああ……景吾でいい」と言ってくれた。


小声で話している私たちに父が近づいて来て、景吾に話しかけた。


「景吾くん、今日はご両親と一緒かい?」
「ええ」
「そうか。それはよかった」
「よかった。といいますと?」
「いや、久々に話したくてね。知らないと思うけど、景吾くんのお父さんとは古い付き合いでね。若いときはよく一緒に飲みにいったりしたんだよ」
「それは・・・知りませんでした」


跡部家と秋原家の関係が明るみに出て、流石の私も絶句。
透がこっちを見てくるから思わずアイコンタクトだ!


私も知りませんでした!
え!?伊織もそうなの?
うん。知ってたらこんな驚かねぇよ…。
だよね…。改めて秋原家ってお金持ちなんだな…って思ったよ。
私もだよ…。


「相変わらずしっかりしてるな景吾くん。景吾くんがいれば跡部財閥も安泰だ。羨ましい」
「恐縮です」


恐縮ですだって。
大人な会話だな。(父相手にそんな態度じゃなくてもいいのに)

つくづくこの世界の子供は大人だなと思う。
もっと子供らしくしていればいいのに。


「ところで、景吾くんはテニスがとても得意だと聞いてるよ。今度伊織と対戦してみないかい?」


ごふっ


「ちょっ!!お父さん!!!」
「・・・そんなに伊織さんはお強いんですか?」


思わず噴き出すところだぞ!!
何カミングアウトしてんだ!!
ほら!景吾もビックリだぞ!信じられんって顔してんぞ!


「今更何照れてるんだ伊織」


照れてねぇぇええええええええ!!!!

実の娘の心中なんて知ったことかと、娘自慢をする父の言葉は止まらない。
どんどんカミングアウトしなくていいことをカミングアウトしていく父。(母よ!止めてくれ!!)


「去年だって日本で男の子相手に連戦連勝で帰ってきたじゃないか。それに透ちゃんだってかなりの腕前だって伊織から聞いてるよ。ね、透ちゃん」
「え!?あ、いや、伊織ほどじゃないです・・・」
「2人とも今度胸を借りるつもりで景吾くんと試合してみたらどうだい?どうかな景吾君?」
「・・・・・・へえ、それは楽しみですね」
「「っ!!」」


こいつ、不敵な笑みを見せやがった…!


跡部景吾と試合なんて…絶対絶対絶対いやだぁぁああああああ!!!!!






あの後、何とか父と跡部を言いくるめてテニスの話は有耶無耶にしてやったよ!(やったよ!)
それから、跡部の父と母はすごかったとここに明記しておこう。
すっごくダンディなおじ様と、すっごく綺麗な美女だった。
なんだこの夫婦って思ったよ!(けーごの目元がすごくお母さん似だった!)

仲良く話している秋原家、笹本家、跡部家。
そしてその周りにたむろしているも、近づけない中小企業のお偉いさんとその家族。
まぁ、気持ちは分かるよ。
というか、私と透を睨みつけるのは止めてほしい。(大方けーごのことで睨んでるんでしょうけど)

誰もけーごなんて取らねーよ!

私と透はいたたまれない雰囲気の中で黙々とケーキを食べ続けた。






 

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