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クリスマス会と聞いて、眉間に皺が寄ったのは仕様がないことだと言い聞かせた。
番外 アメリカでのクリスマス 5(跡部視点)
赤い封蝋、白地に金の印字のシャレた封筒。
親父とお袋の少し後ろについて、俺は会場入りを果たした。
「これはこれは、跡部様。ようこそいらっしゃいました。招待状をお見せ願います。………ありがとうございます。どうぞ中へお進みください。メリークリスマス!」
古ぼけた屋敷を改装でもしたのか、レトロな雰囲気のこのホテルは、まぁまぁだなという感想しかわかない。
俺にはこれくらい何でもない。
ただの古ぼけたホテルにしか見えなかった。
会場にはどこもかしこも親子連れ。
思わずため息が出そうになる。
こういう場では跡部の子息として振る舞わなければならないから、些細なことでも見落とさぬよう注意を払った。
?妙に騒がしいな。
会場は俺たちが来る前から、なんだかざわざわと落ち着かない雰囲気だ。
何だ?
『秋原家が笹本家とこの会場に来るらしい』
『本当か!?それじゃあ、やはり…』
『ああ、やはりあそこにはつながりがあるのだろう』
『一体どんなコネを使ったのか』
なるほど。
貿易社会での頂点と言われる秋原家。
そしてその秋原家に懇意にしてもらっている笹本家がこのパーティに来るのか。
だから、こんなにもざわついているのか。
両親を伺ってもさほど驚いた様子は見られない。
もしかしたら事前に知っていたのかもしれない。
跡部家は秋原家や笹本家と仲がいいわけでも悪いわけでもない。
秋原家と笹本家の社長とはこう言った席で会話を交わしたことはあったが。
そう親しいわけでもなかったし、両親も多分ではあるがそう仲がいいわけでもないだろうと思う。
そこでやっと俺達跡部家の存在に気がついたのか、周りの大人たちがわらわらとこちらに集まってきていた。
その大人たちの横には娘たち。
ため息が出そうだ。
カツカツと足音だけが響いている。
長い廊下を俺は歩いていた。
先ほどまで会場にいた俺は、我慢の限界に来ていた。
来るやつ来るやつ俺の元に娘だけ残していきやがって!
キャアキャアと周りでうるさく纏わりつかれてはたまらない。
落ち着いて食事も出来やしないぜ、全く!
何とか言いくるめて席を外したはいいけれど、歩いているうちにここがどこだか分らなくなってしまった。
頭に血が上っていたからか、周りの景色に目を向けていなかったから今自分がどこを歩いていて、どこに向かっていて、そして会場がどこにあるのかもわからない。
まぁ、階段を見つけたら下に降りてりゃいつかはどっかにつくだろう。
そう予測して。
カツカツ カツカツ
長い廊下はまだ先が見えない。
時たま曲がり角があるが、それを曲がってまた進む。
それを繰り返していると、遠くで何かが落ちる音を聞いた。
何だ?
金属のようなものが盛大に落ちた音。
…金属、鎧かなんかか?
俺はそちらに足を向けた。
「っ痛!!」
「おい、あんまり手荒に扱うなよ」
「そうだぜ。そんな華奢な子にさ」
「!!」
女が3人の男に囲まれているのが見えた。
二の腕を掴まれて満足に力も出ない上に3人に囲まれてしまっては逃げ出せないだろう。
俺はいつもならここで面倒だと踵を返すんだが。
……ほぅ、あの女、目が死んでねぇ。
「はな、せぇ・・・!!」
女は泣きそうな声で、それでも食ってかかって行こうとしている。
俺はその女に興味を持った。
たまにはこういうのも悪くないかもな。
「その汚い手をどけな。あーん?」
俺はそう言いながら、女の二の腕をつかんでいる奴を睨んだ。
女も男達も、俺の存在に気づいていなかったのか、バッとこちらを振り向いた。
と、女と目が合う。
ピンクのふわっとした上品なドレスを着た、可愛い顔した女だった。
「!!」
「んだよ・・・!このガキ」
「ガキはさっさとママのとこ帰りな」
まさかそれは、俺様に向かって言ってんのか?
この跡部景吾様に逆らって生きて帰れると思ってんじゃねーだろうな?
ふっ、いい度胸だ。
「あーん?聞こえなかったのか?こいつから手を離せといったんだよ」
俺様との格の違いを見せつけてやるよ。
続
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