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番外 アメリカでのクリスマス 1(伊織視点)

小5の冬。
私の家の郵便受けに一通の封筒が投函されていた。
赤い封蝋の付いた、白地に金の印字のオシャレな封筒。

受け取った父の反応は、なんともいえないものだった。





番外 アメリカでのクリスマス 1(伊織視点)





その日私とリョーマは越前家でいつものごとくテニスに励んでいた。
いつもなら疲れたといってすぐに休憩している私だが、今日の私は一味違うのだ。
そんな私に南次郎さんも気づいたのか少し不安そうにこっちを見てる。

試合中は、ちゃんとボール見てください!


「伊織?何でそんなに嬉しそうなの?」


何年か前に私がプレゼントした帽子を目深にかぶって汗を拭きながら聞いてくるリョーマ。
ああ、可愛い。
近頃のリョーマは反抗期なのか、南次郎さんの風当たりがすごいけど、私には相変わらず素直で可愛い。


「んー、内緒ー」
「……教えて?」


グハッ!上目遣いは反則だよね!
リョーマは学習したのか私の扱いがうまくなった。(何を学習してんだ)
上目遣いにおねだりなんて日常茶飯事になってきてるよ。
くぉおお!と悶えながらもリョーマの質問に答える私。(リョーマには甘いんだよ!)


「久しぶりに透がこっちに来るんだって!」
「…透?」
「あれ?リョマ覚えてない?」
「………覚えてるけど」
「(間が)…けど?」
「…なんでもない」
「なんだよー。…まあいいか。でね?お父さんがクリスマス会に御呼ばれしててさ。私も連れてってもらうの!もちろん透もね!」
「……………………ふーん」


あれ?リョーマ不機嫌。
南次郎さんはリョーマの不機嫌の理由がわかるのかニヤニヤしてるし。




「リョマ?」
「……クリスマスイブは?」
「イブ?イブは透帰ってこれないんだって。残念だねー」
「…ふーん。で、伊織は?」
「私?」
「祝ってくれるんだよね?」
「ああ!リョマの誕生日?もちろん祝うよ!一緒にケーキ食べようね!」
「うん!」


嬉しそうな顔で即答したリョーマ、可愛いな!
なんだ、そっかそっか。
自分の誕生日忘れられてると思ってたのか!
こいつめ!と私はリョーマに抱きついて頭をぐりぐりしてやった。


「わ!イオリ!」


リョーマは口では抵抗するんだけど、結局は私の好きにさせてくれるんだよね。
現に今も私に抱きつき返してきたし、ぎゅーってしてくる。

可愛い!!






「ってことがあったんだよ!」


その日の夜、私は受話器を手にもって大きな声で透に事の次第を説明した。
リョーマの可愛さを透にもおすそ分け!(という名の自慢話!)


『あーはいはい。ラブラブだね』
「いいだろー!リョマ本当に可愛いんだよ」
『わかったって。(それにしてもリョーマ、不憫だな)』
「あ、ねぇ、透」
『ん?なに?』
「そっちさ、どう?」
『どうって、なにが?』
「晃さん」
『ああ、お父さんね。相変わらずというか、うん。想像してる通りだと思うよ』
「ああ、やっぱりか。家もだよ。父がウザイ」
『ウザイて、雅人さん泣いちゃうよ?』
「だってさ、着ては脱いで着ては脱いで着ては脱いで。ずーっと繰り返しなんだよ?毎日ぐったりだよ」
『あー、ご愁傷様。伊織の家って私の家よりもすごかったもんね。今もそうなんだ』
「終いには自分がデザインする!だよ?なくね?」
『え!?もうクリスマス会まで日がないよ?』
「私もそう言ったら”大丈夫!お父さんに任せなさい!”だって」
『うわぁ。……雅人さんなら言いかねない』
「いや、言ったんだって。店員さんの前で叫んだんだって!」
『…もう本当に何て言っていいか』
「ですよね」
『…今日はもう寝るか』
「だね。なんか疲れたよ」
『うん。お休み』
「お休み」


私は知らなかった。
数日後に出来上がったドレスを着た私に「いつもの伊織ももちろん可愛いけど、このドレスを着た伊織は天使のように可愛い!!」と叫ぶ父がいることを。
日本で弦一郎が透に私宛の伝言を頼んだことを。



そして。
このときの私は、クリスマスパーティで予想外のことが起こるなんて思ってもいなかったんだ。





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