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寂しさの先には(伊織)

何で死んでしまったの?なんて、私にわかるわけがない。
私ですら、何で死んでしまったの?って考える。
偶然?ううん、必然。運命だったんだよ。
そう言えれば一番簡単だよね。
でも、運命なんてそんなの、信じてなかったし、あるとも思ってなかった。
あったとしても、私がそれに当てはまるなんて考えたことなかった。
1億分の1。100億分の1。1兆分の1。
ありえない数。宝くじ当たるより難しいんじゃないかな。
それに私なんかが当たるはずはないんだって。
でも当たっちゃった。
私と透に白羽の矢が当たっちゃったんだ。
なんで?なんて神様に聞いてくれ。
私は知らないんだから。
でもきっと。神様すらも知らないんだろうね。

不思議なんてないんだって。
あるのは全部事実だけだって。

私たちが死んだのは事実。
生まれ変わったのも事実。
ありえないことがあったのも事実。
神様にすら分からなかったことも事実。
全部事実でしかないんだよ。

だからさ。
ね、泣かないでね。
私は親孝行なんてできなかった。
心配ばっかりかけて、苦労ばっかりかけて。
挨拶も出来ないまま、あなたたちの知らないところで勝手に死んじゃった。

ごめんね。ごめんね。ごめんね。
いままでありがとう。
育ててくれてありがとう。
生んでくれてありがとう。
すごく楽しかったよ。
すごく幸せだったよ。
お父さんとお母さんの娘に生まれて本当に幸せだった。
先に死んでごめんね。
死に顔を見せちゃってごめんね。
子供の葬式なんてさせちゃってごめんね。
大好き。
もっと生きていたかった。

でも新しい世界に行きたいと思ったのも本当なの。

本当に親不孝者。
こんな私なんて忘れちゃってね。
…嘘。覚えていて。
ずっとずっと、覚えておいて。
私がそこで生きていたこと。
私がそこに存在していたこと。

私たちがいた、生きた証よ。

 


私は新しい世界で、新しい家族とともに、新しい人生を歩んで行くけど。
何もかも、新しく新調して、人生さえも新しくしちゃったけど。

私があなたの子供であった証は、私の頭の中にあるから。
ずっとずっと覚えているから。
だから、悲しいことは忘れてしまって。
楽しいことだけ覚えておいて。


大好きな大好きな、大好きな人たちよ。

ずっとずっと忘れたりなんてしないわ。

 

 


 

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