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部活後にみんなでファミレスに寄って軽い夕飯を食べた。
みんなはこの後家に帰ってからも夕飯を食べるって言っている。
ブン太なんて「食べ足りねー!」なんて言ってさ。(一番たくさん食べてたのに)
ファミレスを出て、みんなでゾロゾロお買いもの。
CDショップ寄ったり、本屋さんに寄ったり。
このメンバーで一緒に帰ることはなかなかないし、遊んだりすることもなかなかないからすごく楽しくて。
わいわい騒ぎながら、電車に乗ってみんなで帰ろうって。
なんやかんやでみんな忙しい身だから、いつもは1人2人かけてたんだけど、今日は久しぶりにみんなの予定があったんだ。
だから部活も早めに終わるし一緒に遊ぼうって提案した。
いつもなら気づいていただろう。
いつもならちゃんと気づけていただろう。
なんでこんなときだけ。
電車に乗ろうとしてて、ふと気付いたら幸村がいなかった。
あれ?って思った。
私が一番後ろにいたから、幸村が私の前にいないのはおかしい。
私は後ろを振り向いて、目に入ったのは。
「せ………精市!!」
「幸村――!」
幸村の倒れている姿だった。
普段口にしない幸村の下の名前を私の口が叫んだことも、弦一郎がいつもの怒鳴り声よりも大きな声で幸村を呼んだことも、いつも余裕のある顔で飄々としているみんなが慌てても、透が泣きそうになっていても。
私の頭にはさっきの幸村しかなかった。
焼き付いて離れない。
倒れて弱弱しくこちらを見ようとして、でも動けない幸村が。
焼き付いて離れない。
ねぇ神様。
運命って何ですか?
「免疫系の難病で、しばらく入院生活になるのだそうだ」
無慈悲な宣告。
何で?
何で彼だった?
ねぇ彼が何をした?
テニスを愛する少年から、テニスを取って何が楽しい?
「…………精市」
精市精市精市精市精市精市精市…………………精市!
知っている。
彼がちゃんと戻ってくることを。
知っている。
彼は病に勝って帰ってくることを。
知っている。
彼はテニスを出来るようになると。
知っている。
彼が誰よりテニスを愛していること。
帰ってくる。
でもそれは精市だけど精市じゃなくなっている。
心の底からテニスを愛している彼じゃない。
非情さに押しつぶされそうになって。
ああ。
ねぇ誰か。
たすけて
あの優しくてテニスが大好きな彼を。
どうか。
ねぇ神様。
お願いだから。
お願いだから。
彼からテニスを取らないで。
私と透は知っている。
彼がテニス界に帰ってくること。
私と透は知っている。
この世界には必然なんてないってこと。
偶然で創られているこの世界。
何がきっかけで、理が変わるか分からない。
すでに私と透という”あの世界”にいなかった存在がいる。
そのことでもしものことがあったとしたら。
私は私を許せないかもしれない。
ああ、ねぇ神様。
お願いだから、お願いだから。
彼からテニスを取らないで。
私からならなにをとってもいいから、だから。
彼からテニスを取らないで。
寒い冬の出来事だった。
完
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