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好きな人の好きな人(赤也)

俺は先輩が好きっす。
でもその先輩に好きな人が出来たみたいで。







番外 好きな人の好きな人







「もう本当にさ、可愛いんだって!」
「あーはいはい。分かったってば!それ何回も聞いたよ?伊織」
「だって!言い足りないんだもん!」


いつも伊織先輩と透先輩は仲がいいなって思う。
毎日毎日あれだけ一緒にいて話をしていて、よく会話が続くなって少し関心してしまうくらい。
そして、ちょっと嫉妬してしまうくらい。(もちろん透先輩に!)

だって、だってさ。
自分の好きな人が自分以外と一番仲いいのってやっぱ癪っしょ?
そりゃ、透先輩と伊織先輩は親同士が仲が良くて、小さい頃隣に住んでて、伊織先輩は透先輩が大好きで。
だから2人は別格に仲が良い。
そんなの分かりきってることだけど!だけどさぁ!
俺としては、やっぱちょっと、ほんのちょっとね!
寂しいっつーか、構ってほしいっつーか。(羨ましいっつーか)

だって何があっても伊織先輩は透先輩が一番で、大好きで。
俺の入る余地なしって言うくらいずっと一緒で。
いいなーって思う。
でも、俺も透先輩(先輩として)大好きだから、透先輩ならいいかって思うんだ。
目下の敵は幸村部長と仁王先輩だし!(あと、越前!)
そんな敵の先輩達も今のところ先輩に手を出そうとかしてないみたいで、だからちょっと油断してたんだ。


「もう本当に!可愛いんだよ、山田クン!」
「可愛いのはわかったってば」


ちょっと待って!
待ってよ伊織先輩!!

昼休みに入ってすぐに教室を飛び出して伊織先輩の教室に来てみたらすでに透先輩がいて。
そんで話してる内容が誰か可愛い人の話で。

でもまさか、それが男の話だなんて!(そんな!)


「だってさ!山田クンって呼んだらこっちに来てさ!そんで膝に頭乗せてくるんだよ!?可愛いっしょ!」
「まぁ、それは可愛いけども」


伊織先輩の膝枕!?(俺もしてもらったことないのに!)


「でしょ!?そんでさ、頭撫でてあげるとすっごく嬉しそうな顔してさ!もっと撫でろって言ってくるんだよ!」
「(なーなー鳴いてくるんだろうなー)はいはい」


そんで、挙句に撫でて貰っておきながら、撫でろだと!?(贅沢者め!)


「あーもう!山田クン可愛すぎる!大好きすぎる!!」


大好きなんて!(俺だって滅多に言って貰えないのに!!)


「私も山田クン大好きだなー」
「だよね!可愛いもんね!でさ、山田クンさ。すっごく気位が高いよね。私と透にしか触らせないんだもん。そんなところも可愛いんだけどね!あー頭撫で撫でしたい!ちゅーしたい!」
「声大きいよ!ちょっとボリューム落として!」


ちゅーって、キスのことっすよね!?(もうそんなに進んでるんっすか!?)


「だって、山田クンが可愛いんだもん」
「そういえば、山田クンって眼の色何色だったっけ?」
「眼?緑だよ。グリーン」
「そうだったっけ?でもいいよね、緑の目」
「シルバーに緑ってすっごい似合ってるよね!山田クン最高!」
「だよね。本当に似合いすぎてて困るよ」


茫然自失。
あー、伊織先輩好きな人出来たのか。
しかも透先輩もその人が好きなのか。(伊織先輩はラブで透先輩はライクって感じだな)
てことは本当にいい男なんだな。(だってあの2人が好きになるくらいだし)(しかもハーフみたいだし)

何か泣けてくる。
だってさ、だってさぁ……本当に好きなのに。
俺、ずっと初めて見た時から先輩のこと好きなのに。

てか誰だよ山田って!


「伊織先輩!」
「ん?あ、赤也!」


我慢できなくなって教室に入って伊織先輩を呼べば、すぐにこっちを向いて俺に気づいて。
そんで、にっこり笑顔で腕を広げて「おいで」って言ってくる。

…………行くに決まってるっしょ!


「伊織先輩――!!」
「っと。あー赤也も可愛いなvv」
「伊織先輩伊織先輩」
「んー」


俺の髪に顔を埋めて(俺は先輩の胸に顔を埋めてv)ぎゅってしてくれる。
あー俺先輩が好きだわ。

改めて実感。

それにしても先輩ふにふにだなー。
気持ちいい。

先輩のふにふにを体感しているともう何もかもどうでもよくなるんだよね。(さすが伊織先輩)
あー、ねむてー…。


「んー、赤也の髪気持ちいいー」


先輩はそう言いながら俺の髪に頬をぐりぐりしてくる。
先輩のこういう態度ってすっげー可愛いと思う。
というか可愛い!すっげー可愛い!!
なんか「もじゃもじゃーvv」とか聞こえるけど、伊織先輩だからいいかって思う。(ちょっと泣けてくるけど!)(気にしたらダメなんだ!)


「はー、赤也の髪も山田クン並みに気持ちいいv」


出た!山田!!
そうだ!そうだよ!!
俺は伊織先輩に山田って誰なのか聞きに来たんだった!!


「伊織先輩!」
「ぅあ、はい!!」
「山田って誰っすか!!」
「へ?山田…って山田クンのこと?」
「そうっす!それっす!!誰っすか!?」
「んー、山田クンはねー私と透のー…」


伊織先輩と透先輩の!?


「大事な子vv」
「な!!」


そんな!(痛恨の一撃!)
俺は先輩に抱きしめられながら腕の中でぐでーってなった。
めそめそめそ。


「そんあ、酷いっすよ。俺というものがありながら山田にも手を出してたんすね」
「はぁ?」
「あんまりっす」


先輩が「何言ってんの赤也?」とか言ってるけど、それに受け答えする元気さえない。
めそめそしてたらそんな俺が不憫になったのか透先輩が声をかけてきた。


「伊織、今の言い方じゃ誤解されちゃうよ?」
「ん?誤解?何を?」
「山田クンのこと」
「山田クン?」
「赤也きっと山田クンを伊織の彼氏かなんかかと勘違いしてるよ」
「へ?そうなの?赤也」
「…違うんっすか?」


あれ?違うの?
じゃあ、伊織先輩は俺のもの!?(やった!!)
伊織先輩は俺の顔を見て(この時の俺はすっごく嬉しそうに笑ってたって透先輩があとで教えてくれた)苦笑してから質問に答えてくれた。


「違う違う。山田クンはペット!私と透の可愛い猫ちゃん!」
「……ね、猫!?」
「そうそう。猫!ノルウェージャン・フォレスト・キャットって言う種類のシルバーの毛並みの可愛い猫ちゃん!名前は”山田クン”!」
「……………………何で”山田クン”なんっすか?」
「ん?可愛いじゃん」


ああ、伊織先輩が名付けたのか。(妙に納得してしまった)
それにしても紛らわしい!なんで山田クンなんて名付けるんだ!

透先輩も伊織先輩を見てため息ついてる。
そうっすよね。普通猫に”山田クン”なんて名付けないっすよね。

まぁ、にこにこ笑ってる先輩が可愛いからいいけど。


「よかった、猫で」
「何がよかったなの?」
「だって先輩に彼氏でもできたんかと思ったんすよ?」
「私に彼氏ができたらダメなの?」
「ダメじゃないっすけど、俺だって先輩を好きな人間の1人なんすからやっぱり嫌っすよ」
「っ!」


今のちょっと告白っぽくなかった!?
先輩、照れてくれたかな!?(ドキドキ ワクワク)

ちらっと先輩を見ると……あれ?


「赤也可愛い―――――!!!」
「ぅおわ!」


がばぁって抱きつかれた!(伊織先輩の胸!当たってる!!)


「赤也可愛い可愛い可愛い――!!」
「っ伊織先輩、あの!む、胸が!!」
「あー!もー!!可愛いんだよー!バカー!!」
「ちょ、透先輩!助けて!!」
「…はいはい。伊織、ストーップ!!」


助かった!
伊織先輩の胸に押しつぶされて息が出来なくて死んじゃうとこだったっすよ!(本望だけど!)
伊織先輩はいまだに可愛いを連呼してる。
……何か、俺の告白通じてない!?


ま、いいか。
今のところは。

彼氏がいないってことだけでもわかったわけだし!
こんなに鈍い伊織先輩なら早々彼氏できねーよな!!





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