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幼稚園からまっすぐ、私と透は私の家に帰る。
両親が仕事に行っている間は、いつも一緒にいるからだ。
私たちが帰ってくると、メイドさんや執事さんが出迎えてくれる。
でも今日は違った。
幼稚園から帰ってきた私たちを出迎えたのは、お隣に引っ越してきたお隣さんだった。
第9話
「ただいまー」
「おじゃましまーす」
いつもならここで「お帰りなさいませ、お嬢様方」と執事の笠松さんが声をかけてくれるのだが、今日はそれがない。
代わりに、聞いたことのない声が私たちを出迎えた。
「おー、お帰り。君たちが伊織ちゃんと透ちゃんか」
「「……おじさん誰?」」
「!お、おじ!?」
私たちの素直な言葉にショックを受けたのか、目の前にいるおじさんはよろよろと後ろにあとずさり、額に手を当てて何かを嘆いている。
ぶつぶつ何やら呟いているけど、きっと気のせいだよね!
そうだね!
私と透はアイコンタクトで言葉を交わした。
見た目は5歳の私たちだが、精神年齢は25歳と24歳!
見た目は子供、頭脳は大人!なんだからね!!(あれ?漫画が違う!)
とりあえず、玄関で立ち往生してることもないだろうと、私たちは靴を脱いでいつものようにリビングへと向かった。
音もたてずにリビングの扉を開くと、いつも仕事をしているはずの人たちの後ろ姿が目に入った。
「お父さん!お母さん!」
「4人ともどうしたの?」
私も透も驚いた。
いつも忙しそうにしていて、仕事が終わるまでなかなか帰ってこれない4人が、家のリビングに勢ぞろいしているのだから。
私たちの姿を目にとめた4人は口々に、お帰り、と言って迎えてくれる。
「どうしたの?何かあった?」
「いや、今日はね伊織。お隣にお隣さんがお引っ越ししてきたんだ」
「お隣さん?」
「そう、さっき玄関で会わなかったかい?」
「「…会ったね」」
父の言葉に私と透は顔を見あわせて同時に答えた。
そしてもう一度父を見て、それがどうしたの?と言外に語ってみる。
「お隣さんになる人がね、お父さんと透ちゃんのお父さんの先輩なんだ」
「私と透のお父さんの?」
「そう。高校の先輩でね、こっちに引っ越してきたって聞いて住むところが隣だったからビックリしてね」
「そうそう!南次郎先輩って言うんだけど、いっつも突然なんだよ」
私の父は私を、晃さんは透を抱きあげて私たちに分かりやすいように噛み砕いて教えてくれる。
なんでも、私の父と晃さんが隣同士だと知って、なら自分も、と思って引っ越してきたらしい。
母たちもそれを微笑ましそうに眺めている。
「でな、せっかくだからお手伝いして、今日は一緒に夕飯はどうですか?ってお誘いしたんだ」
「一緒にご飯食べるの?」
「そう、伊織はいいかな?」
「うん、いいよ」
「透は?」
「いいよ」
「そうか、よかったですね!南次郎先輩!」
いつの間にか私たちの後ろに来ていた南次郎さんが、少し恨めしげに私たちを見つつ、引き笑いをしている。
きっとまださっきのダメージが残っているのだろう。
ごめんね。
心の中でそっと呟いておいた。
「そういえば、南次郎先輩にもお子さんがいましたよね?こっちに来ていないんですか?」
「あ?ああ、あいつは倫子と一緒にお買い物中だ。そのうち帰ってくるだろ」
「……奥さんに、今日の夕飯を家で食べるってことは言っておいたんですか?」
「……………やべっ!電話してくる!」
「こけないでくださいよー!」
「おー!」
南次郎さんは顔面蒼白にして携帯を握りしめながら、バタバタと派手な音をたてて玄関まで走って行った。
それを見た4人はまた、彼らしい、と笑っている。
時に透よ。
私は透に向ってアイコンタクトを飛ばしてみた。
なんだい、伊織?
透もアイコンタクトで応戦してくる。
私、さっきから引っかかってることがあるんだよね。
伊織も?実は私もだよ。
…なんだろうね?
…なんだろう?
お隣さんに関係することだというのはわかるんだけど。
うーん?
私たちは2人して首をかしげながら、喉に引っかかって外れない何かを必死に取ろうとしていた。
何かが引っかかる。
でもその何かがわからない。
いったい何が引っかかってるんだろう?
ただわかるのは、引っかかったその何かは、とてつもなく重要なことだということだけだった。
続
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