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透が日本に旅立っていった。
思い立ったら行動派な透の両親。
そんなところ、似なくていいのに。
ぽつり思った伊織だった。
第16話
透が日本に行ってから、私は両親にパソコンを買ってもらった。
透曰く、「連絡なら携帯よりもパソコンの方が楽じゃない?」らしく(確かに日本とアメリカじゃそうかもしれないとは思ったし)、両親にお願いして買ってもらった。(父が嬉々として買いに行ったことは私の知る由じゃない)
「あー」
伊織は何とはなしに声を出す。
最近1人でいるのが少し寂しい。
いつも一緒にいた透がいない。
寂しい。
「ね、イオリ」
「あ、リョマ」
「テニスしよう?」
「へ?テニス?」
「そう!テニスしよう!」
いきなり現れたかと思ったらいきなり「テニスをしよう」と言い出したリョーマ。
言いながら私の腕をつかんで必死に外へと引っ張っていく。
3歳でもやっぱり男の子。
見た目は華奢だけど、結構力が強い。
「ちょっ…リョマ!腕痛いよ」
「あ、ごめん!」
引っ張られている腕が痛いと訴えた私の言葉を聞いて、しょんぼりしながら手の力を弱めてくれた。
それでも腕は捕らえられたままだが。
「何、どうしたの?…リョマ?」
「………て、イオリ…………から…」
リョマは私の腕をつかんだまま、下を向いて小さい声で何かぼそぼそ言っている。
「ごめん、リョマ。聞こえなかったから、もう一回言って?」
「………だって!イオリが…さみしそう……だったから」
ああ、この子は。
気付いてくれたのか。
表面上、親の前では笑っている私。
困らせちゃいけない。
まして、私は普通の小さな子供じゃない。
りっぱに成人している(と言っても精神年齢だが)大人なのだから。
でも、やっぱり寂しいものは寂しいのだ。
「リョマ、リョマ」
「…イオリ?」
「ありがとう、リョマ」
「…」
「ありがとう、ありがとう。私、リョマがいるから寂しくない。もう寂しくないよ」
「……っ………うぇ……」
私はリョーマの身体を抱きしめて、優しく優しく囁いた。
私にはリョーマがいる。
寂しくない、寂しくない。
リョーマがいるから寂しくないよ。
リョーマも私に反射的に抱きついてきて、そして泣きだした。
何に対しての涙なのか、何で急に泣き出したのか。
私にはよく分からなかったけど、それでも私はリョーマを抱きしめていた。
しばらくたって、ようやく泣きやんだリョーマをもう一度抱きしめて、それから顔を覗き込んでこう言った。
「今日は一緒にいよう?そして明日一緒にテニスしよう?」
リョーマと一緒に。
口に出さずに伝えた気持ち。
リョーマはさっきまで泣いていたのがうそのように笑って。
「っうん!」
元気な返事をしてくれた。
透には今度、メールしよう。
なにも後生会えないわけじゃないんだもんね。
でも、いつかあいつしばく!
決意も新たにそう思ったのは、私の心の中にしまっておこうと思う。
続
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