[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
私が、死んだ?
………………………………嘘。
第4話
私が死んだ?
だって、ほら身体も動くし言葉も喋れる。
見えるし聞こえるし、私はここにいる。
それでも死んだというの?
伊織は縋るような眼で目の前の男の顔を見つめる。
冗談でしょ?嘘なんでしょ?
そう目が語っているのが嫌というほどわかる。
だが、現実はそう甘くはない。
「いいえ、あなたは先ほど死にましたよ」
「………嘘」
「あなたの隣に座っていた笹本透さんもあなたより先に死んでいます」
「このバスの乗客の中で一番最後の犠牲者が、あなたです」
たぶん、きっと。
私は今すごく変な顔をしているだろう。
目を見開いて、驚愕を露わにして、眉間に皺を寄せて。
それでも、なんでだか、すんなりと自分の死を、友の死を受け入れられた。
ああ、私は死んだのか、と。
「……さっき、神様に会うとか言ってたね」
「はい」
「それは、私たちが、私と透が死なないはずの人間だったからなんだよね?」
「はい」
「………私たち、どうなるの?」
「…それは神様に聞かねばわからないことです」
「………そう」
私は男の人、ミカエルに抱き起こされた。
まだ足に力が入らない。
全身から何かが抜けていったような感覚。
何とか立ち上がった私の手はミカエルと繋がれている。
何?
私は首をかけげて、心の中で問うた。
ミカエルはにこりと笑い、行きますよ、と言ってすぐに何かに引っ張られるような感覚がした。
ぎゅっと目を瞑り、途方もない不安と恐怖を私は一時、忘れた。
目をあけると、見たこともない扉の前だった。
「何用か」
「先ほどこちらに来た魂の片割れをお連れしました」
目の前にある扉のすぐ横に2人の鎧を着た護衛の人がいた。
護衛の人は私の方をちらと見て、「入れ」と言って少し横にずれた。
立派な(樫の木だろう)大きな扉。
この先に神様と透がいるのか。
ミカエルが扉を押して中に入っていく。
私も後を続いた。
ギィイイ・・・
重苦しい音が響いて、扉が開く。
広い大理石でできた広間。
扉から一直線のところに1つの(これまた立派そうな)椅子があり、その横にもう2つ少しばかり小さな椅子が置いてあった。
立派そうな椅子には線が細く、凛とした雰囲気の壮年の男性。
その横にある椅子の1つには見知った顔が不安そうな顔をして座っていた。
「透!!」
私はすぐに走りだした。
「伊織!?」
透は私の顔を見てすぐに立ち上がった。
何も聞かされていなかったのか、なんで自分や私がここにいて、目の前にいる壮年の男性が誰なのかも分らないみたいだった。
きっと私よりも何も聞かされずにここまで連れてこられたんだろう。
目が潤んでいる。
泣きそうなくらい怖かったのか、それとも不安だったのか。
私はそれを見て、すぐさま透に駆け寄り頭を撫でた。
大丈夫。
そう言い聞かせるように。
透はそんな私を見て、少し笑ってくれた。
続
≪ 第5話 reincarnation | | HOME | | 第3話 reincarnation ≫ |