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第2話 reincarnation

真っ暗な中。
寒いとも、温かいとも、何とも感じない。
何も聞こえないし、何も感じない。

未だかつて体験したことのない静寂。


恐いと思った。




第2話




目を覚ますと見慣れない景色。
なんだか煙みたいなものがもわもわと周りを囲んでいる。
でも、ほこり臭いとも何とも思わない。
何もわからない。

何が起こった?

眼に映るのは、バスの残骸。
砕け飛び散ったガラス、鉄がむき出しになったシート、微かに見えるちらつく炎。

いったい何が起こったというんだ?

周りを見回そうとして、はたと気づいた。
自分の手にある感触。
ぬるりとした何か。
下を向いて驚愕に目を見開いた。

自分の身体を貫いている鉄筋。
右胸の下あたりに、見慣れない鉄筋が生えている。

急激に痛みが競り上がってきた。
何で?
何が起きたんだ?

わからない、分からない、解からない!


「っ!透!!」


透は無事だろうか?
自分の隣を見る。



………いない。

いない。
隣にいたはずの透がいない。

そういえば、この場所に自分以外の誰もがいない。
一緒にバスに乗っていた十数名も、運転手も、隣にいた透すら、見当たらない。

意識が朦朧とする。
ああ、もうダメだ。

そこで2度目のフェードアウト。
これが私の人生の終わりだと、ふとそんなことが脳裏をよぎった。


「お、漸く死んだね」


聞こえたのは男の人の声。
今の言葉は誰に向けたものだろうか?
…もしかしなくとも私にか?


「そういう言い方ってないと思う」
「お、ごめん。いやー、なかなか死なないからどうしようかと思ってたんだよ」
「死ぬ死ぬってねぇ………そういえば、あんた誰?」


さっきから聞いてれば死んだしんだと連呼するこの男。
だが、少し前までは私以外はここにはいなかったはずだ。
運転手だって、一緒に乗っていたはずの十数名の人たち。
そして、隣にいた透。
みんないなかった。
私1人だった。

意識がフェードアウトした瞬間に、死んだと思った瞬間に現れたのこ男。
ゆったりとしたオフホワイトの布を、ワンピースのようにというか、マントのようにというか。
一枚布の洋服を着ているかのような風貌。
あれだ、昔の絵画とかに描かれた”天使”のような格好。
ウェーブのかかった金髪を腰まで伸ばしている。
しかも容姿端麗。

なんだこの展開。

私は頭痛がしそうだ、と思ったところで、あれ?と首をかしげる。
そういえば私の身体を鉄筋が貫いてて、体験したことのない激痛がしたはずだ。
でも、今は全く痛くも痒くもない。

そろっと下を向いてみるも、先ほど見た景色は広がっていない。
そこには普通の私の身体があっただけだ。

一体どういうことだ?

先ほどの激痛が夢であるわけがない。
だが、


「君は死んだんだから、痛いなんて思うはずないだろう?」
「!」


そうだ、忘れていた。
そういえばこいつがいたんだった。
私の問いかけに答えた男。

お前は一体誰なんだ?


「私はミカエル。天使ですよ」






ああ、目眩がする。



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