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第1話 reincarnation

何かの間違いだと思った。



第1話




「ほら!急いで!間に合わないよ!!」
「これでも急いでるって!先いって、先!」


バタバタと走る足音。
夜の闇の中、2組の急ぎ足の音がする。

2人は大学で知り合った友人で、今日は学校が提供する東京行のバスに乗車する日だった。
2人で東京に行って遊ぼうと思って、一緒に申し込んだのは2週間ほど前。
大学の課題や講義で忙しく、すっかり忘れてしまっていたのを今日の放課後に思い出したのだ。
それから2人は急いで準備をし、バタバタと慌ててバス停留所へと急いだのだった。

現在の時刻は22時40分。
バスへの集合時間は22時30分。
すでにバスが出ていても文句も何も言えない状態だった。
だから2人は急いで走った。

あの角、あの角を曲がると、バスが見えるはず。

肩までない黒髪を翻して先頭を走っていた秋原伊織は、後ろにいるであろう友人の笹本透を伺いつつも急げ急げと足を動かした。
あの角を曲がって、バスが…。

バッと角を曲がる。


「あ!まだバスいるよ!急いで!!」
「え!本当!?」
「本当本当!急げ!」
「わかってるよ!」

「すみません!!」


乗車客を調べていた運転手さんに駆け寄って、伊織はすぐさま謝った。
運転手さんは、次からは気を付けてくださいね、と一言言うと、乗車券と学生証を提示するよう言ってきた。
私はバッグの中を漁り、すぐに乗車券と学生証を提示する。
そこで後ろにいた笹本透も追い付き、乗車券と学生証を提示する。


「じゃあ、すぐに出発するので席に着いてください」
「はい、よろしくお願いします」
「お願いします」


3人はすぐにバスに乗り込んで、運転手さんは運転席に、私たち2人は急いで席へと向かった。
秋原伊織こと私が窓側の席で友人の笹本透が通路側の席になった。


「間に合ってよかったね」
「ラッキーだったね。間に合わないかと思った」
「ね」
「ね」


2人して乱れた呼吸を整えつつ、相槌を打つ。
おかしくて少し笑ってしまった。

バスが動き出した。
窓の外をスムーズに流れていく景色が、視界の端に見え隠れした。

伊織は疲れた身体をシートにぐったりと預けて呟いた。


「あー、何か安心したら急に疲れてきたー」
「あれだけ走ったんだし、当たり前だよ」


2人は顔を見合わせて苦笑を漏らす。


「もう寝ちゃおうか?」


伊織は透に問い掛ける。


「賛成ー、・・・おやすみ」
「あはは。おやすみ」


もぞもぞと、すでに寝る態勢の透に素直に笑いが零れた。

私も寝るか。
呟いて窓の外に視線を向ける。
夜遅く自然が周りを囲んでいる中にいるせいか、バスの中にいながらも空気が澄んでいるように感じる。
黒い中にぽつぽつと青白い明かりが見えて、綺麗という言葉か自然、口からついて出た。
夜空に瞬く北斗七星を眺める。


「そう言えば、北斗七星には双子星があるんだよね。」


私には見えないけど。
心の中で呟いた。
夜が深くなってきて、そこで私はブラックアウトした。



そこで私の、私たちの人生が終わってしまうなんて思いもしなかった。



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