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ふぃー…。
やっとの思いで一日目の授業終了しました!
今日と明日は午前授業だから助かったけど、きっと明日もテストずくし何だろうなー。
第27話
入学早々まさかのテスト地獄。
疲れに疲れて机にぐたーっとなっていると、廊下を弦一郎が歩いてきた。
ああ、弦一郎のクラスも授業終わったんだ。
「弦一郎ー!」
「む?…ああ、伊織か」
「透にお昼のお誘いでしょ?私も一緒に行く!」
「うむ。早くしろよ」
「うん!」
透は迎えに行くのにその途中にいる私を迎えに来ないとかちょっと寂しいじゃんか!
でも弦一郎の場合、無意識に透の保護者として行動してるんだろうな。
机の上にある筆箱やノートをバッグに入れて、隣にいる幸村にも声をかける。
「ね、ゆっきも一緒にお昼食べるでしょ?」
「もちろん」
にこりと可愛いくらいに微笑んで(白笑顔!)片付けを終えたカバンを持って隣に並んだ。
「じゃあ、行こうか」
「!」
え!え!?
ゆっきが私と手を繋いでらっしゃる―――!!!
「え、ちょ、ゆっき!?」
「ん?何、伊織」
「え、何って、こ、これ!」
「ん?」
「手!」
「手がどうかしたの?」
「……はぁ、何でもないです」
「そう?」
何を言っても無駄なんですよね!
さっきまでは白い笑顔だったのに!
何でいきなり黒くなってんのー!?
もういいです。
手くらいいいですもう。
はぁっと溜息をついて、繋がれた手をそのままにしておいた。
もう文句を言っても意味がないだろう。
しかし、ゆっきの我儘はよくわからんな。
私なんかと手を繋いで楽しいのか?
うーんと唸っている伊織を幸村は楽しそうに笑って見ていた。
『何あれ』
『むっかつくー』
『幸村君になれなれしいっつーの』
『ほんとほんと!』
『何様のつもりなの?あの女』
『…ね、楽しいこと思いついちゃった』
『………ああ、ふふ。私も』
『私もよ、クスクス』
ちらと横目で後ろを見ると数人の女子が一つの机に固まって話をしている。
小さい声で話しているからか隣にいる伊織には聞こえていないみたいだ。
俺はもともと耳がいいから、どんな声でも聞き逃したりはしないけどね。
後ろを見ていた顔を元に戻して、いまだ何か唸っている伊織をちらと見る。
彼女たちが伊織に何かすることくらいすぐにわかる。いじめだ。
きっと俺と仲良くしている伊織が気に入らないとかそういう理由だろう。
…くだらない。
俺が誰と仲良くしようと、俺の勝手じゃないか。
………伊織に何かしようものなら俺は黙っていないよ。
真田もそうだろうし、きっと透もそうだろう。
……ふふ。
「ゆっき、何笑ってんの?」
「うん?…ふふ、何でもないよ」
「?」
透が怒ったところを見たことがないけど、きっと大変なことになるだろうね。
それを考えると面白いな。
ま、伊織に手を出したら俺だって何をするか分からないけどね。
「伊織、幸村、早くせんか」
「あ、うん!ほら、ゆっき」
「ふふ、そう慌てなくてもいいじゃないか真田。ゆっくり行こうよ」
「う、…うむ」
そんなに怯えることないじゃないか、真田。
本当に真田は俺の笑顔に慣れないな。
透はあんなに早くに慣れたのに。
くすくす笑っていると透のクラスに着いた。
すぐに伊織が開いている窓から顔を入れて、透を呼んだ。
「透!お昼一緒しよう!」
「あ、伊織!弦一郎に精市も!ちょっと待って!」
「はーやーくー!」
「そう急かすでない、伊織」
「はーい」
「ふふ」
本当に伊織は見ていて飽きないな。
真田に叱られて少ししょぼんとしながら返事を返す伊織を見やる。(「だってお腹空いたんだもん」だって)
いつも元気で明るい伊織。
くるくると表情を変えて周りを明るくしてくれる。
不機嫌な時も不満がある時もそれを隠そうともしない。
それが却って、俺には安心できる。
凄く心地いい。
透もそうだ。
伊織とは違って、ちょっとおっちょこちょいだけど落ち着いた雰囲気のある透。
明るくて真面目で負けず嫌いで。
でもやっぱり嬉しいことは嬉しいと、嫌なことは嫌だとはっきり言ってくれる。
だから俺も真田も彼女たちの傍にいたくなる。
離れられなくなる。
否、すでにもう離れられないのかもしれない。
「……っ!」
「…伊織?どうかした?」
「ううん!なんでも!?」
「…そう?」
「そうそう!」
急に隣の伊織の肩がびくっと跳ねた。
教室で机の中身をかばんに閉まっている透を見ていたのに、なにかあったのか?
透を見ても、特に何も変なところなどない。
何にそんなにビックリしたんだ?
『ぅわー…柳生だ。透の隣柳生だよー…うわー』
「伊織?」
「ぅわはい!」
「何さっきからぶつぶつ言ってるの?」
「な、何でもない!何でもない!」
「本当に?俺に隠し事してない?」
「してないしてない!」
「ふーん。……まぁ今回は見逃してあげる」
にっこり
「伊織って俺のにっこり笑顔に弱いよね」
「ゆっきはわかっててやるところがえげつないよね」
握った手をぎゅーっと締め付けたら(「痛っ!いたたたたたー!痛い痛い痛い!ゆっき許して!」)涙目で見上げて懇願したりしたら許さざるを得ないじゃないか。
伊織はずるいよね。
俺の弱点を悉くついてくるんだもん。
…ずるいよ。
「お待たせ!」
「うむ、では行こう。伊織、幸村!置いて行くぞ!」
「ちょ、待って!…ほらゆっき、行こ!」
「待ってよ伊織」
繋いだ手はさっきの反動(繋いだ手をぎゅー事件)で離してしまっていたから、置いて行かれそうになってちょっと焦った。
手に伊織の温度が伝わらないのが、少し寂しく感じる。
右手を見て、すぐに走ってみんなの傍に行く。
思い違いだ。勘違いだよ。
伊織と繋いでいた手が離されて寂しいと思ったのは、ペットが自分の元を離れて行った時のような、そう言った感情からだ。
きっとそうだ。
幸村は自分の芽吹き始めた気持ちをそう割り切って、みんなと並んで歩いた。
芽吹き始めた気持ちはもう元には戻らないことを、彼はまだ知らなかった。
続
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