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番外 アメリカでのクリスマス 3(伊織視点)

あれ?

キョロキョロとあたりを見回しても、料理が並んでいるテーブルの方を見ても。
お目当ての人物は見つからなかった。



透がいない。






番外 アメリカでのクリスマス 3(伊織視点)






ああ、もう!
何で私は透から目を離したんだ!!

私はいら立っていた。
表面上はそうとは分からないだろうけど、確かにいら立っていた。

透がいない。

先ほどケーキを取りに行く。と言ったきり、全く透の姿を見かけないので、まさかと思いながらも真弓さん(透のお母さん)に聞いてみたら。


「あら伊織ちゃん、透ならさっきお手洗いに行く。っていってたわよ?」
「・・・ええと、それって何分前くらい?(まさか、まさか)」
「んー・・・そうねえ・・・20分前くらいかしら?お手洗い混んでるのかしらねえ・・・」


…………のほほんとしている場合ですか!(あー…もう……)


…………………なんか嫌な予感が…。
というか、あいつ絶対迷ってる!


私はすぐに父…はいろいろまずいから(きっと烈火の如く走り去って、このホテルにいるスタッフ総出で探し出すに違いない)母に一言告げて(「透迷子!」)すぐに会場を出て行った。

頭の中には会場から一番近いトイレへの道を思い浮かべて。



トイレについてもお目当ての人物はいない。
まぁ、最初からこんなに簡単に見つかるとは思っていなかったが、どこまであいつは人の予想を裏切らないんだ。
こういうときは、思いっきり裏切ってほしいんだけどな。

はぁっとため息をついて私は透の思考に思いを巡らせた。


トイレを出た。
そこでまず何かがあったに違いない。
私はトイレを出たところでキョロキョロとあたりを見回す。


「………あれだ」


伊織の視線の先には一つの彫刻。
あれだ。絶対にあれだ。

なんて分かりやすいやつ。

伊織はその彫刻に近づいた。
綺麗な彫刻だ。
水瓶を抱えた女神がかすかに微笑んでいる。

はぁ、もう一つため息。

またキョロキョロとあたりを見ると、また見つけた。
次は絵か。次は壷、次は………。


伊織は来た道をかすかに覚えつつ、透がたどったであろう道を順々に歩いて行く。
と、道が分かれてしまった。

階段だ。
下へも上へも行ける階段。
他にも道はあるけれど、きっとこの階段を下りたか上がったかしただろう。
問題は下に行ったか上に行ったかだ。
ここで選択を誤ると見つからない気がする。

………はぁ。

今日3度目のため息だった。
自分の勘を信じるしかないか。


私は上に進んだ。





「これは、いかにも出そうな雰囲気だなー……まぁ、西洋だし、大丈夫か?」


私も透も、曰くお化けとか幽霊といった類のものが苦手だ。
私は日本のそれに限定して苦手だから、こういった西洋のものならそうでもないんだが、透は…。

今頃泣いてたりしないだろうか?

そこが心配だった。


私は目の前の長い廊下を睨みつける。
仕様がない。とりあえず進もうか。

私が透を探し出して1時間は経っていた。


「あーもー!あいつはいつもいつもいつも!弦一郎の苦労が目に見えて分かる!想像が出来るあたりもうダメだ!あー!もー!まったく、今日に限って携帯置いて来てやがるし、何のための携帯だ!」


イライラが収まらない私は、誰もいないのをいいことに愚痴を盛大にぶちまけていた。
透は学習能力がなさすぎる!


「あー、もう………どこ行ったんだよー、透ー」


それでも段々と声が小さくなっていった。
透が見つからない。
探し出して1時間も経ってしまった。

もしかしたらもう帰ってきているかも。

私は淡い期待を抱いて、一度会場に戻ってみることにした。
今来た道を思い浮かべて、頭の中で今自分がどの位置にいるか考え会場までの最短ルートを探しながら。



「透ー!透ー!!」


ああ、戻ってこなければよかった。

会場は(一部)騒然としていた。
言わずもがな、透の父、晃さんだ。(その近くに私の父も見える)
私は近づきたくないと言う身体に鞭打って、そろそろと近付いて行った。


「お父さん」
「伊織!」
「伊織ちゃん!!」


父の迫力もすごいが晃さんの迫力にはさすがに勝てていなかった。
晃さんは父よりも先に私の元にやってきて、私の肩を抱くと「心配した」「透は?」と言った。

あー、これは何と言っていいか。


「…………まだ帰ってきてなかったんだ」
「……見つからなかったのかい?」
「うん」
「…そんな!」


晃さんが凄い顔してる。
うわー、こんな晃さん見たくなかった。

凄く青ざめた、でも目が血走ったような顔をした晃さんは。
でも、私が想像したようにスタッフ総出で探そうとはしていなかった。
……きっと真弓さんあたりがかるーく交わしたんだろうな。(母は強し)

晃さんが真弓さんに泣きついたと同時に、私の元には父が来た。
父はやはり心配したのか、少し顔を歪めて「よかった」「お帰り」と言ってくれた。
私は「うん」「透いなかった」とだけ言った。




早く帰っておいでよね!(みんな心配してるよ)







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