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P.S 『明後日、私日本いくから』
「・・・・・・はああああああああああああ!?」
第18話 (透視点)
小学4年生夏。明日から待ちに待った夏休み。
私は自分の部屋でパソコンの画面を見ながら思わず声をあげた。
P.S 『明後日、私日本いくから』
こんなメールを送ってくる奴はこの世に一人しかいない。
秋原伊織。私の幼馴染にして、前世からの親友。
どうやら、アメリカの長いバケーションを利用して日本に遊びにくるらしい。(文面から察するに)
会うのなんて本当に久しぶりだ。どんな感じになってるかな。
うわ!すっごい楽しみ!!凄い嬉しい!!嬉しいんだけどさあ・・・・・・
明後日、日本に来る。 って、おい・・・
せめて一週間前には連絡いれようよ!!
「寿ー!!寿ー!!伊織がね、明後日こっち来るんだって!!」
私は急いで執事の寿にそう告げる。
いくら金持ちだからといってもいろいろ準備があるしね。
「はい、透お嬢様。存じておりますよ。2週間ほど前からこの寿、こっそり準備を旦那様から仰せつかっておりますれば。」
ふぇ!?なんですと!?
実は伊織は一か月以上前から日本に遊びに来る計画をこっそりと立て、事前に親経由でこそこそ連絡をしていたらしい。
伊織から私に直接連絡を入れるまでは、私に気づかれないように!との伝言付きで。
き、気づかなかった・・・。いつの間にそんなことを・・・
自分でも思うけど、私って鈍いよなあ・・・って思った瞬間だった。
「いやー、久しぶりの日本!!何だか感慨深いわー!!」
空港から笹本家に向かう車の中、伊織がそう言った。
「しぃっ!!!『久しぶり』じゃなくて『初めて』の日本!!・・・あと小学4年生は『感慨深い』とか言わないからね・・・」
「ああ、そうだったそうだった。いや、だって久しぶりって言いたくなるでしょ!!これは!!」
「まあ・・・私も4年前は思わず言いそうになったけどね・・・(苦笑)」
伊織だ!伊織が日本に来た!!
会話のこのテンション・・・!!さすが伊織だわ。相変わらずだわ。うん。
私は一人で変なことに感慨深い思いを抱いていた。
友達とはやっぱりメールや電話だけじゃなくて、生で話すに限る。
伊織も同じことを思っていたようで、自宅に着くまでお喋りのネタが尽きることはなかった。
今までたまってた鬱憤を晴らすように私も伊織もずっと車の中でおしゃべりをしていた。
アメリカでの生活のこと、リョーマのこと。
日本での生活のこと、弦一郎のこと
ときどき年不相応の会話が混ざっていたけど、運転していた寿には聞こえてない。という方向でお願いしたい私たちであった。
「ところで、真田の様子が私超気になるんだけど」
「あ、そうだよね。伊織は気になるよね。荷物置いたら弦一郎のとこ行ってみようか。多分この時間は家で勉強でもしてるんじゃないかなあ・・・」
「お前すでに真田の行動熟知してるな・・・さすがお隣さん・・・」
「いや、それほどでも・・・。4年も付き合えばさすがにね。っていうか弦一郎何気に行動が1パターンな気がする・・・。あの子、行動範囲狭い子だから。」
(真田を『あの子』呼ばわりですか・・・!!さすが前世から重ねた年齢30歳前後(泣)!!
っていうか・・・透に1パターンって言われる子供真田って・・・(笑)やべええ早く見てええええ!!!)
と一人心の中でテンションをあげまくる伊織だった。
「おじゃましまーす!!弦一郎ー!!昨日話してた友達連れてきたよー!!」
「・・・・・・おじゃましまーす」
奥から はーいどうぞー!!という真田母の声が聞こえたので普通に上がり込む。
伊織は心なしかテンション上がり気味に見える。まあそりゃそうだ。
普通に考えたら、あの「皇帝」の家に上がり込んでるんだから。慣れって恐い。
そしてすでに勝手知ったる真田の家。
私はずんずん弦一郎の家の中を歩いて行く。その後に続く伊織。
「弦一郎?入るよー?」
「・・・うむ」
襖を開けると案の定、弦一郎が勉強をしていた。本当に君は期待通りの子だわね。
「弦一郎。この子が昨日話してたアメリカにいたときの(本当は前世からだけど)親友の伊織だよ」
弦一郎は、ああ。と思いだしたような声をあげて軽く会釈した。
「真田弦一郎だ。お前のことは透から聞いている。よろしく。」
「っふ!!・・・ぶはっ、秋原・・・っ伊織・・・伊織です・・・ ぶふっ!!っふっ・・・!!よ、よろしく・・・!!」
今まで抑えていたのか、元々抑える気がなかったのかわからないけど、弦一郎が喋ったのを皮切りに伊織は爆笑しはじめた。
うん、何か分かる気がする。分かる気がするけどさ・・・
お前笑いすぎだから!!
車の中で笑うかも。って言ってたのはこれか。
っぶは!!は、腹いてええええっ・・・!!
とか言ってるし。ほら弦一郎も何か心なしか困ってるじゃないですか。
「・・・・・・透。俺は何か笑われるようなこと言ったのか?」
「いや、笑いたい年頃なんだよ・・・うん。弦一郎のせいじゃないよ。うん・・・」
どうフォロー入れたもんかわかんないんですが伊織さん。
そろそろ笑うのやめてもらえませんかね。
「っひっひ・・・!!ああ・・・。あーあー笑った笑った・・・。めっちゃ笑った。涙出たんだけど」
そんなことを言いながら改めて弦一郎に自己紹介を始める伊織。
さすがですね伊織さん・・・なんというどこまでもマイペース。
皇帝(子供Ver.)を相手に素すぎると思います。
すでに弦一郎相手に圧倒している。弦一郎ってあんまり他人に圧倒されることってそうないんだけど・・・。
そんな親友が普通に凄いな。と思った午後3時でした。
そんな伊織はこの夏休みの1ヶ月間、この神奈川で過ごすらしい。
もちろん私の家に1か月間お泊り!!さすが生まれた時からの付き合い!!
普通だったら1か月も友達の家にお泊りなんて許されないよね。
両親同士が仲良いからこういうことができるんだろうなあ。やっぱり神様に感謝感謝。
しかもアメリカのサマーバケーションは長いから、日本で1ヵ月過ごしてからアメリカに帰ってもまだ1ヵ月以上も休みがあるらしい。いいなあ。羨ましいなあ。
今年通算30歳になろうかという年(涙)だけど、それでも長い休みっていうのはやっぱり魅力的に思っちゃう。
4年前は即答で日本に行くって言ったけど、こういうところはちょっとアメリカが羨ましかったりして。
伊織にしてみたら真田と一緒にいれるくせに贅沢言うなって話なんだけどね。
だから伊織が帰る8月31日までの夏休みはずっと3人で遊んで過ごした。
3人で勉強もしたし、花火も祭りも、テニスもした。
伊織は今でもテニスをアメリカで続けてるから、自身は気づかないみたいだけどかなりの腕前になっていた。
小学生の弦一郎相手とはいえ、1ゲームも落とさないんだから相当強い。
だってあの越前南次郎が教えてるんだもんなあ・・・。そりゃあ強くなるよね・・・。
私も小学校にあがったと同時に弦一郎と同じテニススクールに通い始めた。
この世界の私は前世と比べて格段に運動神経がいいみたいで、同じテニススクールに通う女の子の中ではかなり実力がある方だとは思ってたんだけど、伊織相手じゃ1ポイントも満足にとらせて貰えなかった。
弦一郎もちょっと油断してたみたい。弦一郎も相当強い筈なんだけど。
終わった後は「俺もまだまだ修行が足りん!!」とか言って伊織相手にライバル心剥き出しにしていた。
弦一郎の中で第一印象悪かった伊織だけど、(初対面でいきなり笑えばなあ・・・)今は見直してちょっと尊敬してるみたい。
この時、伊織にこてんぱんに負けたことが弦一郎に火をつけて、後の「皇帝」を作り上げたのはまた後日の話。
続
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