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リョーマの誕生日も、年末年始も終わった。
ある寒い日の出来事。
別れは唐突に訪れた。
第15話
その日、私と透は透の家で遊んでいた。
久しぶりに両親も揃った休日で、透の家に集まってみんなでお茶をしようとのことだった。
透の家の執事の寿さんが作ったお茶菓子に、淹れてくれたコーヒーと紅茶。
みんな笑ってて、だから余計に、その言葉は私には衝撃だった。
「透、大事な話があるの」
「何?」
「お父さんとお母さんはね、今年の春から日本でお仕事をしなきゃいけなくなったんだ」
「…え?」
「だからね、透も一緒に日本に引っ越すことになったんだよ」
「伊織ちゃんと離れちゃうのは寂しいでしょうけど、ごめんね」
「え―――!!」
透は嫌だ嫌だと首を横に振っている。
私も透と離れるのは嫌だ。
だって、死んだあとですら一緒だったのに、今さら離れ離れなんて。
そんな!
「透、そんなに駄々を捏ねないでくれ」
「そうよ、透。神奈川県は自然もあるし、きっといい所よ!」
「……………神奈川?」
「?ええ、引っ越し先は神奈川県よ」
引っ越し先が神奈川だと判明した瞬間、急に黙り込んだ透。
ちょっと待て、お前まさか。
行くとか言わないよね?
私を置いて行くとか言い出さないよね!?
「行きます!」
お前―――――!!!
あれか、お前の脳内は神奈川=立海か!
そして立海>私なのか!!
ああ、なんだか悲しくなってきたよ。
あれ?おかしいな。
目から心の汗が!!
「そうか!一緒に行ってくれるか!」
「よかったわね、晃さん!」
「ああ、よかった。きっと透のことだからもっとごねて泣き出すのかと思っていたんだが」
「な、泣いたりしないよ!」
「そうかそうか!もう透もお姉さんだもんな!」
わしわしと透の頭をなでる晃さんを私は茫然と眺めていた。
あいつ、私のことなんて頭からすポーンと抜けてやがる。
はぁ、それも透らしいっちゃらしいんだけどね。
仕様がないか。
私はこれ以上ないくらい喜んでいる透を眺めて、苦笑を浮かべた。
春先。
こうして透は、アメリカの小学校の新しい制服を着ることなく、日本(神奈川)へと飛び立ったのであった。
あいつ、今度会ったらしばく!
続
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