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第31話 reincarnation

さてさて。
最初の仕事はお掃除ですね!
あいつが出てこないことを祈ろう…。







第31話






先輩たちの聞き込みも終わり、私と透は今、マネの部室前にいます!
これからこの部屋を掃除するのか。
…今日中に終わるのかな?


「透、道具は持った?」
「隣から雑巾と箒と塵取り借りてきたよ。完璧!」
「よっしゃ!いざゆかん!!」


ガチャ

ドアノブを回して部屋に入る。
うーわー、埃舞ってるよ。
さっき入った時はまじまじと見なかったからそんなに汚くないかなとか思ってたけど…この部屋めちゃくちゃ汚いな!
改めてここの汚さを実感した。


「うへーやっぱり汚い」
「だねー」


ドアを開け放していることで、風が入ってくるのか少し埃が舞っている。
口開きたくないな。
絶対虫いるよ!(というか、やつがいる確率高そう!!ヒィ!)


「どこからしようか?」
「まずは上からが掃除の基本!」
「さすが透!と、その前にボトルとか外に出しちゃおう!」
「そうだね。埃かぶってからまた洗うのも面倒だし」
「じゃあ、そのまま出そうか」


頭にタオルをかぶって、準備万端な透。
やる気満々ですね!

上からってことは、埃を落とす作業からか。
…ものが埃かぶっちゃうな。(もともと積もってはいるけど)

とりあえず換気しなきゃ。
ドアは開け放してあるから、窓を開放せねば!
カーテンがかかってるけど、これも汚いな。(買い替えてやろう!)
カーテンを開けると、少し部屋の中が明るくなった。
そういえば、電球も買ってこなくちゃな。(電気つかない)
曇りガラスのようになってしまっている窓を開け放して風を入れる。
新聞紙もほしいなー。

それにしても。
汚い。本当に汚い。

少し明るくなった部屋は先ほどよりも明確に見える。
さっきも汚いと思ったけれど、今はより汚いのがわかる。
物であふれた部屋に埃が舞ってる。(なんか片付けられない体育倉庫みたい)

ボトルの入った籠と、スコア帳などを手に持って、扉のわきに邪魔にならないように置いておく。
ボトル籠とか床に置いてなくてよかった!
椅子の上に置いてなかったら全部洗いなおしだったよ。


「どこから手をつけていいか分かんないね」


私の言葉に透も深く頷いてくれた。


「同感。とりあえずは中にあるもの全部出しちゃいたいかも」
「うーん。でも私たちだけじゃちょっと難しいものもあるよ?」


いくらなんでも、ロッカーとか棚を私たち2人で外に出したりはできるわけない。
どうしたものかと考えていると後ろから声がかかった。


「伊織、透!」
「ゆっき!」
「あ、精市」


後ろからかかった声は幸村のもので、ドアからひょっこり顔を出して中を覗いていた。
……美しい顔が歪んでますよ、ゆっき。

部屋の中の惨状にさすがの幸村も顔をしかめた。
そりゃこの部屋の状態を見ればそういう顔になるのもわかるよ。
ここを私と透だけで掃除するのかー………そうだ!そうだよ!

ゆっきがいるじゃん!!
マネの仕事だけど、こればっかりは私たちだけじゃ無理だ。
幸い今日は自主練日だし、他の日よりは今日終わらせたい。


「ゆっき!今暇?暇だよね?手伝って!」
「あ、うん。元々何か手伝うつもりで来たから」
「やった!透!ゆっきも手伝ってくれるって!」
「本当!?ありがとー!」
「……真田も呼んでくるよ」


そういいながら、テニスコートへと走っていく幸村。
弦一郎も手伝ってくれるかな?


「あ、助かるー!」
「弦一郎がいるなら重いものは全部運んでもらおう!」
「(透の弦一郎への扱いが酷い)そうだね!」


ま、いいか。私に害があるわけじゃないし!(気にしない!)
それにしても手前の道具は全部細々した物ばかりだからいいけど。

ロッカーとか、棚とかどうしよう。


「捨てるもの多そうだね」
「…粗大ごみとかってどうすればいいんだっけ?」


透の質問に答えられない。
学校で出た場合ってどうすればいいんだ?
2人でうんうん言っていると。


「先生に頼んでゴミ回収業者に来てもらえばいいのではないか?」


ぅおう!またもや後ろから声がかかったよ!
驚いて後ろを見ると、先ほどのゆっきみたいにドアからひょっこり顔を出して中を見ている……おかっぱ!

や、柳蓮二さんですか―――!?
うわ、本当におかっぱで目開いてないんだね。(可愛い!幼い!!女の子みたい!!!)

はっとして透を見ると、目がキラキラしてる!
微かに頬が染まってるし!(可愛いな!!)

うあー、口がにやにやする。(これは我慢だ伊織!変態と間違われるぞ!!)


「伊織も透も、何してるの?」
「ぅおっ!」
「ふぉ!」


弦一郎を呼びに行ってくれていたゆっきが、弦一郎を連れて帰ってきたみたいだ。


「べ、別に何もしてないよ!ね、透!」
「うん!別に、何もっ?」


うわぁぁぁ…思いの外どもっちゃったし、声が裏返っちゃったよ!
なんでみんないきなり気配なしに現れるの!(忍者か!!)

私たちの言動がおかしかったのか(挙動不審だったのは認める)眉間にしわを寄せてこっちをじっと見てくるゆっき。
ううう…ゆっきの眼力に対抗するすべを私は身につけていないのに!(こ、こわいよー)
ゆっきの登場に余計に慌てて挙動不審になる私。
そしてその一連の情景を少し離れた場所から観察している柳蓮二。(趣味はやっぱり人間観察ですか!?)


「お前たち何を突っ立ってるんだ。入れぬではないか」


天然に万歳!(さすが弦一郎!)(空気を読めないってやつですね!)
ドアのところで動かずに中をじっと見てるゆっきを変に思ったのか、ゆっきの上から中を覗いた弦一郎は至極まともな質問をしてきた。


「あ、弦一郎!ちょうど良かった!さあ、手伝ってくれたまえ!」
「あ?ああ、部屋を掃除するのだったな。重いものは持とう。どれだ?」


率先して重いものを持ってくれるという弦一郎に、少しまわりを見回してから重そうなものを探す。


「ありがとう!…じゃあ、この段ボールと、これと、それと、棚の上にあるやつをお願い」
「うむ」
「あ、ゆっきも、これと、あの箱とかお願いね!」
「あ、うん、わかった」


何とか話を流そうと、弦一郎に乗ってみたけどどうやら成功したみたいだ。(透も手伝ってくれたしね!)
良かったってホッとして、すぐに部屋の掃除を開始する。

この部屋にある物の数が半端ない。
よくもまぁこれだけの物をこの部屋に詰め込んだもんだ。(収納上手ですね!)
見えるものから外に出して、運んでいく。(重かったり軽かったり、何が入ってんだ?)
手前の机の上や下からがさごそやってると、出てくる出てくる。


「あ、透、ウォータージャグ発見ー!」
「お!それ使えるね!こっちはバケツ見つけた。……だめだこれ。底抜けしてる」
「底抜けとか、どんなことしたらそうなるんだよ!」


ていうか、底抜けしたやつなんてさっさと見限りなさいな!
後生大事に取っておくなよ!

私と透は発掘作業、弦一郎にゆっきが着々と物を外へ出してくれる。
重いものは重点的にゆっきと弦一郎に運んでもらっているけど、腕は大丈夫かな?
見ると、すいすいと運んでいる、さすが彼らです。仕事が早い。(これなら何とか、今日中に終わる…のか?)

…あれ?そういえば柳の姿が消えた。(まあいいか)

いつの間にかいなくなっていた柳だけど、一緒に部屋の片づけを頼んだわけでもないし、自主連があるかもしれないしで放っておいた。
ら、素敵な助っ人を連れてきてくれたよ!


「どうだ、進んでいるか?」
「見ての通りだよ。全然進まない」


そう思っていたら、またドアの方から柳の声が聞こえて、私はそちらに背を向けたまま問いかけに答えた。
トイレにでも行ってたのかな、なんて考えていると新たな声が聞こえた。


「おお、こりゃまた凄いもんじゃのぅ」
「うへー、汚ねぇ」
「これ4人で片付けるのか?」


……うん?(この声、このしゃべり方、このタイミング!)
ま、まさか……ぅおう!
思わず勢いをつけて後ろを振り返ると、銀髪、赤髪、茶色の肌!!
仁王に丸井にジャッカル!!(か、可愛い!幼い!!)

部屋の中を覗いたまま、顔をしかめる彼らと、部屋の中で呆然とする私。
ドアの向こうから部屋の中を見回して、みんな眉間にしわを寄せている。(ジャッカルなんてため息ついたよ!)


「俺たちも手伝おう」
「そうじゃのぅ、同じ1年のよしみじゃし」
「しょうがねぇな!」
「そうだな、やるか」


私が呆然としている間に話がまとまったのか、というよりも元々手伝うために来てくれたみたいで、みんな手伝ってくれることになった。
みんないい子だな。(柳、グッジョブ!)


「…で?俺達はどうすればいい?」
「え!?あ、じゃあ…、同じように物をどんどん出していって貰えるかな?」
「おう!まっかせろぃ!」
「結構時間かかりそうじゃの」
「そうだな。パッパとやるか」
「あ、大きい棚とか、あまり重い物は難しそうだったら無理しないで。手首とか傷めたら大変だし」
「うん。手伝ってもらって言うのもなんだけど、みんな選手なんだし体は大切にしてね」


私と透がそういうと、弦一郎やゆっきも含めたみんなが目を見開いて、少し驚いたような顔をした。
そして、次の瞬間にはにっこりと笑ったのだ!(か、可愛い!!)


「ああ、気をつけよう」
「おう」
「OK。わかってるって」
「了解ナリ」
「フフ…ありがとう。2人とも相変わらずだね」
「まったくだ」


そう言ってゆっきと弦一郎が顔を見合わせた。
その顔がなんだか穏やかで、私も透も自然と頬が緩んだ。


「「……じゃあ、みんなよろしくお願いします!」」
「「「「「「おう!」」」」」」



うん!やる気満々だね!
私も、何だか燃えてきた――――――!!!









 

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