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入学式は金曜日。
今日は土曜日、テニス日和!
第24話
「ねぇ伊織。明日は休みだし、せっかくだからテニスしよっかv」
「え、テニス?」
「そうテニス」
「…だって、透どうする?」
「んー、いいんじゃない?することもないし。弦一郎は?」
「む?土日はお爺様に剣道を習う日ではなかったか?」
「あ!そうだった」
「え?中学でも土日は剣道習うの?」
「んー、正確には部活が休みの日だけだけどね」
「そうなんだー。じゃあ、明日と明後日、2人は剣道しに行くのかー」
「うん、ごめんねー」
「いや、いいんだけどねー…………ちょっと待て」
「伊織?」
「いや、うん、ちょっと待って!」
伊織は何かに引っかかりを覚えて、頭の中で今の会話を繰り返してみる。
ゆっきにテニスを誘われる→透と弦一郎は剣道→テニスできない→私とゆっきの2人きりでテニス
………ノ―――――!!
「………あー、私もそういえば用事あったなー」
「あれ?明日何かあったっけ?」
「(あったってことにしておいて!)ん?あった、あった。あったんだよねー」
「そうなの?じゃあ、テニスできないね」
「(ナイス透!)ごめんねゆっき」
「…伊織?」
「……なに?」
「………もし嘘ついてたら……」
「う、嘘ついてたら何!?なんなの!??」
「嘘ついてなきゃ大丈夫だから」
「何が!?」
「で?明日テニスするよね?」
「…………………行かせていただきます」
「うんvいっぱいテニスしようねvv」
遠くで透が「頑張って!」って言ってくれた気がする。
弦一郎も「次の機会には必ずやお前を倒す!」って言ってた気がする。(そんな宣言いらねーよ!)
そんなこんなで土曜日。
駅前に10時集合、とのお言葉を昨日いただいた私は、準備を終えて早々に寝ました。
寝坊なんてした日には、ゆっきがどうでるかわかったもんじゃないからね!
朝9時半には家を出て、10分くらいで待ち合わせ場所の駅前に到着。
まだゆっきは来てない、と。
私はあたりを見回してみたけれど、あの目立つ綺麗なお顔の持ち主はまだいないみたいで、存外静かなものだ。(と言っても休日の駅前は結構な賑わいだが)
伊織は駅前にある階段に荷物を置いて腰掛け、あと10分かそこらには来るであろう幸村を待つ態勢に入った。
ポケットから携帯を取り出してカチカチカチと意味のない動作を繰り返す。
うー、暇だ。
「ねぇ、彼女。誰か待ってんの?」
「暇そーじゃん。俺らと遊ばない?」
いきなり目の前に影が出来たかと思うと、高校生くらいの男が2人目の前に立っていた。
伊織はちらっと男たちを見て、また携帯に視線を戻す。
お前らには興味ないと言わんばかりの態勢にも、男達は怯まない。
一瞬見えた伊織の顔に、機嫌をよくしてまた話しかけてくる。
「ねーってば。無視しないでよ」
「暇してんでしょ?俺らと遊ぼーぜ」
「…ちょっと触らないで!」
男達は何を言っても伊織がその場から動かないと思ったのか、いきなり伊織の腕を取って無理やり引っ張ってきた。
「触らないでってば!あんたたちウザいのよ!」
「おっと、強気なところも可愛いね」
「そんな眉間に皺寄せないでよ。笑った方が可愛いって」
「っうるさい!」
どうしてこういう男って自分に自信満々にこういう事が言えるのだろうか。
伊織はなんとか腕を外そうとするが、どうあっても外れてはくれない。
男と女の違いってやつをまざまざと見せつけられた。
あー、もう!
本当にウザいな!!
そろそろキレてもいい頃合いだろうかと考えていると、男たちの後ろから声がかかった。
とてつもなく聞いたことのある声が。
「伊織、お待たせ」
「あー?」
「何言ってんだガキ」
「…あ」
ゆっき。
その言葉が続かなかったのは、2人の男に阻まれて見えなかった幸村の顔がとてつもなく恐ろしかったからであって。(もちろん笑顔である)
伊織は心中でこの2人の男に合掌をしたことはここに記しておく。
あのあと、あの男たちがどうなったかは伊織の隣を悠々と歩いている幸村しか知り得ない。
理由は幸村があの男たちを引きずって路地裏に入り、至極爽やかな笑顔で帰ってきたあと有無を言わせずテニススクールまで連れてこられたからだ。
言外に聞くなと言っているのだろうと思い、大人しく従ったわけだが。
……恐ろしい子!
伊織は今日この日、改めて幸村の恐ろしさを垣間見たことになる。
続
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